店販コラム「美容室 店販の参考書」

店販を頑張ると失客率が上がるという思い込み

14 ページ「 店販はどうして難しい?3つの理由 」より

お客様が美容室を選ぶ最大にして唯一の動機とは何でしょうか?
それは、「気にいったヘアースタイルになりたい!」と言う願望です。

美容室は大半がリピート客によって構成されているビジネスです。
と言うことは、「気にいったヘアースタイル」が実現できているか、「許容できる範囲の差異」で収まっている可能性が高いと考えられます。

そこで…、私の見解を発表させていただきますと、

大変な苦労を重ねた結果、やっと出会った「気にいったヘアースタイルにしてくれる(または、フィーリングが合う)美容室、スタイリスト」を、たかが商品を勧められたくらいのことで、簡単に切り捨てる事が可能なのでしょうか? 

私は、この問いに対し「不可能」と答えます。

それほど「気にいったヘアースタイル」になれるということは、絶対的で圧倒的な願望であり価値だからです。これは、結婚などが理由で退職し、遠方への引越しを告知した際に、固定客のお客様がどれだけ悲しむかを見て想像が出来ます。隣県くらいの距離だったらわざわざ尋ねていくお客様も珍しくありません。

このような事からも、「気にいったヘアースタイル」にしてくれるスタイリストさんに対しては、とにかく可能な限りの努力をして、またお世話になりたいと思うのが女性の心理だと思います。

私はコンサルタントとして幅広い世界で様々なビジネスにおける人間関係を見ておりますが、「リピート客」が来なくなる理由の第一位は、「私をその程度の人物としてぞんざいに扱った」というものです。

つまり「人間としての尊厳」を傷つけられた際に全ての人間関係は清算されてしまうという事です。それはかつてどのような懇意な関係であっても修復は難しいと私は見ています。それほど、「尊厳」(誇り)を傷つける事を人は許してくれないのです。しかもそれは大失敗ではなく、「小さな失敗」と「小さな誠意の無さ」の積み重ねで爆発してしまう性質のものです。

もしかすると、気がつかないうちに、お客様の「尊厳」を傷つけるような行為を犯してしまっているかもしれませんので、常時「誠意ある対応」を忘れずにお客様へのおもてなしをお願いしたいと思います。

さて、話を元に戻しますが、
「髪をキレイにしたい」という気持がピークまで高まった故に来店してきたお客様に、「髪をキレイにする方法」を教えた結果、「失客率が上がる」という思い込みにはやはり無理があります。

加えて言えば、「トリートメント」はすでにお客様にとって定番メニュー化されています。「トリートメントメニュー」は、「髪質」を美しくするための専門メニューです。ということは、「髪質の美しさ」はお客様の来店目的に入っていると見ていいでしょう。従いまして当コラムの結論としましては、「商品のおススメが失客率を押し上げる直接的な理由となる可能性は薄い」とさせていただきたいと思います。


ただ、一つだけ失客の可能性を挙げれば、
お客様が「断った」際の、美容師さんサイドの「断られ方」に問題は無かったか? この一点については深く検証してみる必要があります。

お客様の「買わない」という意思表示に対して、美容師さんは「がっかり」してしまい、その時にかもし出すオーラがお客様に取っては不愉快なものである可能性は高いと考えられるからです。

私自身、多くのお客様から店販の問題点として、「断りにくい」、「断ったら気まずくなる」の2点を伺っています。

それは、お客様の意思表示を「その程度に扱い」、美容師さんサイドの「都合を押し付ける」という、「押し売り」を意味してしまいます。
この点については軽く受け止めず、皆さんと一緒に対策を考えて行きたいと思います。