店販コラム「美容室 店販の参考書」

「プライス」に負けない美容師になろう!

114 ページ「 単価1万円の店販はアリ?ナシ? 」より

「高い商品を勧める」=「悪」という前提条件から脱出しよう!

美容師さんの中には、「自分の価値観(財布)」と「お客様の価値観(財布)」を一緒にしてしまい、「金額の高い商品をお勧めする」=「悪」という方程式が成り立っている方が実在します。

社会人生活が始まったばかりで所得の少ない20代前半ならば理解もできますが、ある程度の年齢と収入に達しているベテランさんにまでそういった方がいるのは問題だと思います。

まず、「価格」とは「価値」を表現する一つの単位です。(他に「時間」という価値が存在します)

お客様は「価値がある」と思った「物」や「サービス」に対して、自らの価値観に従ってそれにふさわしいお金を支払います。逆に「価値が無い」と思った「物」や「サービス」に対してはお金を惜しみます。また、「価値観」というものは「人それぞれ」固有のものであり、他人にとやかく言われたり、指摘を受けたりすることを快く思いません。相手の「価値観」をいたずらに評価してはいけない。これは大人のマナーと言えます。

ところが、美容師さんの中には「そんな高い商品、私なら絶対に買わない」などと言って、決してお客様に勧めようとしない方がいます。「私なら絶対に買わない」。についてはそれぞれの自由でよいのですが、その価値観をお客様に押し付けるケースには問題があります。

つまり、「高いものを勧められるのはお客様だって迷惑に違いない」という価値観の押しつけです。これは、逆に言えば「安いものならば勧められても迷惑では無い」、もしくは「安さこそ優先順位の上位条件だ」と言う極端な価値観にもなりかねません。

皆様はお寿司屋さんに行ったとき、唐突に「並」で良いでしょうか?と低価格なメニューを勧められたり、レストランで何の前提条件もなく「リーズナブルなワインのメニューリスト」です。などとご案内をされたら不愉快ではないでしょうか?

価値観を勝手に決め付ける。という事はこういった問題を発生させてしまいます。

従いまして、美容師さんは日常から「価格」に対しニュートラルなポジショニングを保つようにして戴きたいと思います。仮に自分的には「高いなぁ」と思っても、それはあくまでも自分の価値観に過ぎず、お客様には関係の無いことである。という修正が必要なのです。

その商品を「高い」と思う皆様にとっては「高い価格」なのかも知れませんが、その価値を認める皆様にとっては「適正」であり、むしろその価格であることが所有する喜びにつながっているケースもたくさんあるのです。

「高級ブランド品」の販売員は価格に対しニュートラル

最高級ブランドの一つである「エルメス」の販売員は、全生活をエルメスブランドで埋め尽くしているわけではありません。自ら購入が難しいような金額の商品もたくさんあるはずです。

しかし、販売員の方々は自らの価値観や自らの所得レベルをお客様に押し付けることは決してありません。その価値を認め「欲しいと」思えるお客様や、「欲しい」と思って戴ける可能性のあるお客様に対し、エルメスらしい対応を心がることに専念します。

シャンプーは「日用品」ですか?それとも「美容品」ですか?

シャンプーが「洗浄」のみを目的とした「日用品」ならば、千円以上の金額をお客様に出させるのはさすがの私も気が引けます。しかし、美しさを創りだす「美用品」だと思えば、それはある意味で「贅沢品」なのですからそれなりの金額を支払っていただきたいと思います。

もちろん美容の技術でも同じ事が言えます。

例えば「カット」というメニューが、「伸びたからやむを得ず切る」という日用品扱いならば安ければ安いほど都合に合うでしょうが、「自分の見た目の印象を決める最重要ファッション」だと考えれば、それは「贅沢品」ですからちゃんとした金額をちゃんとしたサロンで支払いたいと思うのではないでしょうか?少なくとも「安くあげたい」が優先順位第一位になることは無いだろうと考えられます。

美容師さんが提案する店販品は「美容品」であり「贅沢品」です。

そして、その価値を理解できるお客様は数多く存在します。

もしかすると、美容師さん以上に価値を認めているお客様もいるかもしれません。

そんなお客様へ更なるビューティーライフを楽しんでいただくためにも、美容師さんには「価格」とニュートラルな関係を保って戴きたいと願わずにいられません。